不動産投資は購入金額の規模が大きく、自己資金のみで賄うことができる人はそれほど多くはありません。少ない自己資金でレバレッジをかけるならローンでの借り入れによる手段が一般的でしょう。
では不動産投資での物件購入において、住宅ローンを活用するのはどうでしょうか?
実はここに大きな落とし穴があるのです。今回は不動産投資を行う際に気をつけるべきローンについて解説します。
そもそも住宅ローンと不動産投資ローンはどのように異なるのでしょうか?同じ物件購入なのに、なぜ分けられているのでしょうか?
住宅ローン | 不動産投資ローン | |
金利 | 0.5~2.0% | 1.5~4.5% |
融資限度額 | 年収の7~8倍 | 年収の5倍 |
年収下限 | 300万円以上 | 500万円以上 |
勤続年数 | 1年以上 | 3年以上 |
自己資金 | フルローン可 | 物件価格の5~10% |
住宅ローン控除 | 可 | 不可 |
同じ物件を購入するのに異なる融資を行うのはなぜか、それは借入の目的が異なります。
住宅ローンは本人が居住するのを目的として、自宅購入や増改築を行うための資金の借り入れを行います。あくまで本人の居住用のため、家賃収入を目的とした賃貸経営用の物件購入費用に使うことはできません。
不動産投資ローンは不動産投資での家賃収入などで収益を得るためのローンとなっており、第三者に貸し出すための不動産を購入する場合は住宅ローンは使えません。
審査基準も異なり、また住宅ローンの方が不動産投資ローンより金利が低いため住宅ローンを組んで投資用物件を購入したがる投資家もいますが、契約違反にあたります。
住宅ローンと不動産投資ローンでは金利が異なります。
住宅ローンは仮に滞納した場合、個人が家を失うことになります。不動産投資ローンの場合は、入居者の家賃滞納や空室等で収入が得られないなどのリスクがあるため金利が高く設定されています。
住宅ローンの金利は年利で0.5~2.0%ほど。給与収入は突然収入が下がるなどのリスクは低く、金融機関の貸し倒れのリスク等は低くなります。
対して、不動産投資ローンの金利は年利で1.5~4.5%と返済金額が大きくなります。
返済原資とは、ローンを返済する際にあてる資金のことを指しています。住宅ローンはあくまで個人消費にかかるローンであり、返済原資は毎月の給与収入となります。
一方不動産投資ローンを返済する際の原資は、その物件で毎月得られる家賃収入を基にしています。賃貸経営という事業の中で、入居者から得られた家賃収入で返済するというのが前提で考えられています。
融資を行う際、住宅ローンでは個人の収入や返済能力など「個人の属性」を元に審査を行います。
不動産投資ローンでは、物件の収益性や築年数、資産価値、エリアなど個人の属性以外にも物件の条件を判断材料にしています。そのほかにも、今まで不動産投資を行なっていたのであれば、他物件の収益性も審査に加わります。
また融資の返済には、住宅ローンが70歳までの返済期限になるのに対して、不動産投資ローンは80歳が返済期限の目安になります。
これは返済原資が「労働による所得」「不労所得」による差で、返済期限が異なっています。
住宅ローンはあくまで自身が自宅として住むための物件購入に限定されています。仮に住宅ローンを利用して不動産物件を購入、賃貸として貸し出した場合は融資を行なった銀行に対しての詐欺行為となり、ルール違反・違法行為となります。
過去には住宅ローン商品である「フラット35」を利用した違法行為が頻出するなどの例もあります。
不動産投資会社に勧められて「フラット35」を利用して「低金利・長期の返済期限」の条件で物件を購入した方が、不動産投資として家賃収入目的で物件を貸しており違法が発覚しました。
結局、金融機関から一括での返済を求められるなど、厳しい制裁が入り4%の金利での返済を約束に落ち着いたそうです。
突然の金利上昇に収支計画もうまくいかず、不動産投資は赤字に終わることもあります。
ただしあくまで上記は、不動産投資を目的に住宅ローンでの物件購入を行なった場合の話になります。
居住を目的にして、住宅ローンを組んで購入した物件が事情により貸し出す必要が出た場合には、それに限りません。
同じ物件の購入でも目的によって、利用できるローンは異なります。
また条件が良いという理由で、不動産投資用の物件を住宅ローンで購入した時には後から取り返しのつかない制裁も行われます。
不動産投資を行う場合には不動産投資ローンを活用して、利益を作るようにしましょう。